たんたん、とことこ。 忍者ブログ

傾向
管理人の嗜好の傾向。
[CP]
・主人公は基本右。
・リバは基本的にナシ。
・公式イケメンは基本左。
・受けキャラ至上主義。
・受けキャラがいればあとはなんでもいい。
・かっこいくてもかわいい。
・かわいくてもかっこいい。
・お兄ちゃん/ギャップ萌え属性
・女の子/NLCPもすき。
-----------------------------------
・テニス(幸村くん中心)
 仁幸(仁)、282、白幸、柳幸
 跡幸など幸村右と、リョマ右も
・イナイレ(円堂さん右)
 ブレイク、海外、バンガゼ
 円春・ウル円
・FF7(クラウド右)
 セフィクラ至上
・ハルヒ(キョン右)
 古キョン、会キョン
 キョン長

[dream]
・男主and女主
・恋愛≦仲間・友情
-----------------------------------
(ただ今の萌え)
・片倉小十郎(BSR)
 伊達正宗(BSR)
 松永久秀(BSR)
・幸村精市(TNS)
 白石蔵ノ介(TNS)
・クロロ(H×H)
なんか趣味がばれる…
夢は読むのと書くのではジャンルに差異あり
dream menu
[Dream Menu]
メモ段階のようなものなので、いずれも名前変換に未対応。
一定以上溜まったらなんとかするかと…今は未定。
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※BASARA作品について※
1、2英雄外伝、3宴のみプレイ済
他はプレイ予定ありません。3キャラは出る場合が無きにしも非ず、ですが3のストーリーに関することは無視する可能性高いです。武将について――特に伊達家については様々捏造しておりますので、史実が好き、捏造嫌いな方は読まずにお帰り下さい。
ちなみにアニメも映画も未視聴。基本的に英雄外伝のみで稼働してます。
※テニス作品について※
資料は20.5/40.5巻のみ、知識穴だらけです。
妄想や捏造、原作との相違をスルーできない方は閲覧をお控えください。

各話タイトルオンマウスで説明有
■男主人公
・戦国BASARA
「双竜と鳳雛」
[成長編] 01/02/03/04/05/…
[幼少編] 01/02/03/04(sss)/…
[番外編・梟と鳳雛] 01/…
・Hunter×Hunter
「愛本家と蜘蛛」
01/02/03/…
・One Piece
「夕暮」
01/…
・Whithle!
「青風」
01/…
・Lucky Dog 1
「黒猫ちゃん」
01/02/…

■女主人公
・戦国BASARA
「お嫁様」
「愛姫」
01/…
「家族シリーズ」
さみしがりな君へ5のお題(幼少期)
[配布元:rewrite(ttp://lonelylion.nobody.jp/)]
夜露に濡れた仔猫(元就)
怖がらないで、甘えてごらん(佐助)
放っておけない(政宗)
躊躇いは捨てろ(小十郎)
いつでも近くにいるよ(幸村)
・The Prince of Tennis
「青い道」
01/1.5/02/03/04/4.5/05/5.5/06/
6.5/07/08/09/10/…
「立海大家族!」
設定とsss/病気の話/…
「学校の怪談」
01/
「チェリー」
01/…
「彼と彼と彼女の話」
01/02/…
「たまごの中の愛の色(仮題)」
01/02/03/04/05/06/6.5/07/…

■短編(男女混合/オンマウスで説明)
・戦国BASARA
戦国時代10題
[配布元:沈黙夜宮(ttp://karis.obihimo.com/c/)]
血生臭い夕焼けの戦場を駆けて行く
可憐なる姫よ、戦に出でよ
我が屍の先に天下があるのならば、越えて行け
華の武将に影の忍
・The Prince of Tennis
たったひとつのその椅子に、
[選択課題・恋する台詞]
[配布元:rewrite(ttp://lonelylion.nobody.jp/)]
「そろそろ、機嫌を直してくれないか」
[オムニバス形式短編集]
もういい加減


その他メモ記事
Title/お嫁様メモ/夢設定/双竜ネタメモ/OPメモ
CP story
[CP story Menu]
CP要素のあるSSはこちら。
基本的に男×男のCPしかありません。
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※テニス作品について※
資料が20.5/40.5巻のみなので、原作と相違する点が多々あるかと思いますが、それをご了承いただける方のみご覧ください。
捏造や妄想が苦手な方には全く向いておりません。

タイトルオンマウスで簡単に説明
■The Prince of Tennis
・幸村くんと仁王(仁幸仁)
[配布元:rewrite(ttp://lonelylion.nobody.jp/)]
即物的恋愛十題
「珍獣の飼い方10の基本」
まずはかわいがってきにいってもらいましょう
とてもきちょうで、めったにてにはいりません
かわったものにきょうみをもちます
だっそうにきをつけましょう
さびしがらせてはいけません
かまいすぎるのはあまりよくありません
おこらせるとおもわぬはんげきをうけます
かいぬしのへんかにびんかんです
きほんてきにマイペースです
ていきてきにけづくろいをしてあげましょう
・幸村くんとみんな
「果てなき世界と果てなき僕ら」
支部連絡会編
01/02/03/…

[短編]
・幸村くんと仁王(仁幸二)
[title by Discolo(ttp://discolo.tuzikaze.com/)]
この手には微かでも確かな温もり
・他幸村くん受けとか
[選択課題・恋する台詞]
[配布元:rewrite(ttp://lonelylion.nobody.jp/)]
「僕がいなきゃ駄目だって、気にさせるんですよ」


■涼宮ハルヒ[凍結]
・古キョン
スレてる3年前古泉と現代キョンくん 01/02
エイプリルフール
さくらんぼのへた
りんご飴 01/02/03
安眠と羊?
父と子 01/02
きょうだい
プレゼント
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2024/11/21 (Thu)
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2012/06/27 (Wed)
やっぱりどう考えても不自然だから書き直しです


 
 
 
その日、部活の帰りで遅くなった名保は、ひとり夕暮れに沈む校舎を走っていた。もうすぐ17時。休日である今日は、17時なると校舎の出入り口が施錠されてしまうのだ。内鍵だから出ることは出来るにしても、出た後に鍵を開け放して行かなければならないのはちょっと心苦しい。ついつい時間を忘れて取り組んでしまったおかげで、運動は大して得意でもないのに走らなければならないなんて、と後悔したってどうしようもない。

「おい、君!」
「っ!」

突然、廊下の角から呼びかけられて、名保は驚いて足を止めて振り返った。そこには警備員が難しい顔をして立っていて、名保はばつが悪くなる。別に悪いことして居残っていたわけではないし、遊んでいたわけでもないのだから説明すればこそわかってくれるのだろうが、名保にそこまでの勇気はない。

「もう昇降口閉めるから、早く出なさい」
「はい、すみません」
「…君、1人か?」

ぺこりと頭を下げて踵を返そうとした名保を、訝しげな声音で警備員が呼び止めた。それは咎める風でもなく、本当にただ訝しげに、些か困った風さえ漂わせていて、名保はことりと首を傾げた。名保はひとりだ。部活も、別に休日に決まって行っているわけではなく自由参加、むしろ名保が勝手に来ているだけで今日も1人だったし、部室からここまでの間に誰かとすれ違ったりもしなかった。ゆるく思い出しながら頷いて肯定を示せば、警備員も首を傾げた。

「女生徒の話し声が聞こえたと思ったんだがね…まあいい、もう帰ったんだろう。引き留めて悪かったね」
「あ、いえ。じゃあ、お疲れ様です」

今度こそ、名保は振り返らずに警備員に背を向けて走り出した。
 
 
 
--------
 
 
 
その日柳は、部活終了後に図書室に本を返却しに来ていた。土曜日ということもあって赤也と丸井がどこかに夕食を食べに行こうとはりきっていたので、本を返却した柳はメンバーの集まる昇降口へと急いでいた。そうでなくとも時計は17時に差し迫っていて、校舎が閉まるまでに時間もない。走ることこそしないのは、そうしなくとも間に合うことはわかっているからだが。
不意に、足音が聞こえた気がして柳は足を止めた。歩いてきた廊下を振り返っても誰もいない。そもそも図書室は教室のある本館とは別の、特別教室棟との間にある。休日ということも相まって、そこはまさに人気のない場所だったし、図書室に常駐している司書と話をした際も、休日でも来るのは柳か柳生くらいのものだと言っていた。気のせいか、と再び歩みを開始した柳の耳に、今度はさわさわと軽い、ささやき声のようなものが聞こえてきた。やはり誰かいたのか、と納得して、けれど柳は真田や柳生のように他人に気を付けて注意を促してやるほど優しくはない。疑問が解決されたところで再び歩き出した柳の背後から、今度は先程よりずっとはっきりとした足音と、驚きを含んだ呟きが聞こえた。

「あれ…柳、くん?」

確認するように名前を呼ばれて、先程と同じように廊下を振り返った。さっきの声の主か、と思ったのだが、そこにいたのは軽く息を弾ませたクラスメイトだった。 

「…なんだ、紅槻か」
「うん。こんな時間まで部活?頑張ってるね」

ぱたぱたと廊下を小走りでやってくる名保を待ち、横に並んだところで歩き出した。背の高い柳にすれば随分と小さく見える名保は、柳を見上げて息を吐きながら笑った。その手には見慣れない鞄がひとつあり、彼女が何のためにここに居るのか、聞かずとも柳は悟った。

「それは紅槻もだろう。熱心だな」
「展覧会が近いからね。それに、ひとりでゆっくり進めるのが好きだし」

そうか、と相槌を打って、胸中でそうだな、と頷いた。クラスでしか接点のない2人だが、癖と趣味の延長で、柳は一方的にクラスメイトについてそれなりのことを認知している。その中で紅槻名保という人物は、人付き合いはそこそこで、自分から周囲に話しかけることもそう多くなく、かといって孤立しているわけでもなく、自然と1人で居ることの多い人間だった。この年代の女子にしては落ち着いているような印象があり、ひとりで、と言ったことにすんなりと納得できた。

「柳くんは?何か忘れ物…ってことは、ないか。柳くんだし」
「俺は忘れ物などしなさそうか」
「うん、しなさそう」

こうやって2人が会話をするのは初めてのことだが、意外に話しやすいことに2人共が驚いていた。
その強さだけでなく、容姿の良さでも注目を集めるテニス部のレギュラーの1人にして、ついでに頭まで良い柳蓮二のことを、名保は気難しい人だろうと思っていた。いつもノートを持ち歩いていて細かいところにも気がつくし、なによりそのストイックな雰囲気が、気軽に声を掛けるのを憚らせるような壁、のようなものを感じさせていた。しかし、こうして実際に話してみると、名保は柳に壁を感じることもなく、クラスメイトの他の男子と話すときと同じだった。やっぱり雰囲気に凄みがあるような気はするけれど、それは部活に真剣に向かっている姿を見たことのある名保としては、敬遠する理由にはならない。
逆に柳は、ひとりでいることが多く落ち着いていると評した名保が、案外と良く表情を変えて物事を率直に話すことに多少驚いていた。それは名保が柳に対して変に緊張する必要がないと気づいたからであり、1対1で向かい合う不安の残る相手にはそうでもないことを、まだ柳の認知する範囲にはなかった。

「…そういえば紅槻、俺に会う前に他に誰かいなかったか?」
「他に?」

お互いがお互いに対する認識を改めた会話の隙間に、ふと、柳はそう名保に問いかけた。名保は一人で走ってきたようで、他に誰の姿もなかった、そのことが気になったことを、不意に思い出したのだ。柳の問いに、名保はきょとりと目を瞬かせて、少し首を傾げた。どうしてそんなことを聞かれるのか疑問に思っての行動だったが、しかし名保はそれを聞くことはしなかった。

「警備員さんには会ったよ。早く帰りなさい、って」
「警備員は確か、男だったな」
「うん、そうだけど。お父さんくらいの年齢の。…どうかした?」

何かを確認しているとわかる柳の様子がさすがに気になって、名保は柳に問いかけた。立海大付属の校舎を管理している警備会社からは毎日警備員が派遣されていて、幾日おきかの感覚で顔ぶれは変わるものの、大抵が名保たち生徒にとっては親程度の年齢の男性ばかりだ。博識な柳がそのことを知らないはずがないのに名保にわざわざ確認を取っているのが、夕日の所為もあってか、名保の意識の外側で心にほんの少し影を落とした。多分に、話題の警備員の様子も拍車をかけているのだろうが。

「いや…話し声が聞こえたと思ったんだが」
「話し声?…女の子の?」
「ああ。だが、気の所為だったようだな」

そう言って完結した柳に対して、名保の表情は訝しげなままだった。それを見てとった柳も訝しげに、名保を見た。そうして、柳が問いかけるより先に、名保の方が口を開いた。

「警備員さんも柳くんと同じこと言ってた。もしかしたら隠れて残ってるのかも」
「警備員が?そうか。ならばそういうことなのかもしれないな。警備員の目をかいくぐって隠れるくらいはどうとでもなる」
「柳くんが言うとなんだかすっごく簡単そうに聞こえる」

実際、広い校舎に対して休日の警備員は1名で、ほぼ戸締まりの確認の為の見回りでしかないのだから、やり過ごす方法などいくらでもあって名保もそのくらいはわかっているが、柳が言うと問題ですらないような容易なことのように思えて、思わず笑った。何か、つっかえていたものが下りてすっきりしたような心地がした。名保は自分が思っていた以上に、気にする対象にもなっていなかった気がしていた“女子生徒”の存在が気になっていたんだな、と思う。なんでそんなに気になってしまったのか、それでも解決したおかげで、そのことを考えることもなくなった。

「テニス部は大会?」
「まだ先だが、来週には練習試合も組んでいるからな」

ささやかな疑問を解決し、他愛もない会話をしながら名保と柳は心持ち急ぎながら昇降口へと向かっていた。名保の居た特別棟からは図書室前の通路を通る2階の渡り廊下を行くのが最も昇降口に近い。廊下の端にある階段を降りて、後はまっすぐに進めばいくらもかからずに下駄箱の立ち並ぶ玄関ホールに突き当たる。その、2階から1階へ降りる階段の途中、踊り場で名保は不意に何かに躓いた。

「わっ?!」

突然、柳の隣から名保が消えた。さすがに驚いて柳が振り向くと、踊り場の鏡の前で名保がしりもちをついていた。転んだのだろうか、と近づけば、本人も驚いた表情で柳を見上げた。

「…びっくりした」
「…それは俺の台詞だ。何もないところで転ぶとは器用だな」言

いながら名保を立ち上がらせるためにと手を差し伸べる。驚きから脱却して恥ずかしさが出てきたのか、名保は僅かに顔を赤らめて、「ごめん、ありがと」と言ってから柳の手を取った。

「疲れてるのかな」

照れ隠しなのか、自分の髪を手で梳きながら笑って言う名保に苦笑を返そうとして、柳は異変に気付いた。
最初は自分の影かと思った。次に、夕日とその陰が作る錯覚かと。けれどもそれは、身じろぐ名保の足にくっきりと張り付いたように浮かび上がっていた。

「…紅槻、それはどうした」
「え?」

柳の示すものが何か分からず、名保は頭上に疑問符を浮かべて首を捻る。そんな様子に、柳は指先を向けて“それ”を名保の目の前に示した。

「これだ」
「え?―――え」

名保の目が見ひらかれた。唇が僅かにわななく。そんな名保の様子を、柳はじっと見つめていた。名保の、柳の手を取ったのとは逆の手が、それに触れるか触れないかのところを彷徨う。

「なに、これ……手、の、あと…?」
「さっきまでは、なかった、な?」

柳が、彼にしては非常に珍しく、どこか戸惑ったように名保に尋ねた。視線の先は名保の、日に焼けていない白い足と、そこに残された赤黒い、まるで誰かに強く掴まれたかのように浮き出た、人の手の形をしたアザがあった。柳の記憶する限りでは、つい先ほどまでこんな目立つアザはなかったように思う。柳は自分の記憶力に自信がある。いくら女子の足とはいえ、これほどに目立つアザならば気づいていただろうし、覚えていたはずだ。けれど、今この場には柳と名保しかいなかったことも確実で、そもそも足に手の跡など、どうやって“それ”がついたのかサッパリわからない。
柳の問い掛けに、名保はゆるりと首を縦に振った。

「こ、こんなの、いつ―――っ」

名保の言葉が不自然に途切れた。

「…さっき、転んだとき、何かに引っ張られたような気がして…気のせいだと思ったんだけど、でも、そんな、」

夕日の中にあってもはっきりとわかるほど、名保の顔は青ざめていた。理解が及ばない現象に、二人とも口を閉じた。
先に気を取り戻したのは、柳だ。

「とにかく、ずっとここに居るわけにもいかない。帰ろう。…そのアザもどこかでぶつけたのが“そういう”ように見えるだけかもしれない」

解らないことを解らないままにしておくのは柳にとって非常に不快ではあったが、それ以上に、これ以上ここにこうしていることがよくないことのように思えてならなかった。そしてそれは名保も同じだったようで、柳の提案にぎこちなくも頷いて、「うん、帰ろう」と言った。そうなれば早速、と足を踏み出して2歩も歩いただろうか。つい、と小さくも強い力で、柳は上着の裾を引かれて足を止めた。1階へ降りるための残り半分の階段へと足をかける直前だった。後ろにいるのは名保だ。柳はどうかしたのかと振り返って、先ほどよりも余程青ざめて白くさえなっている名保の顔を見て眉を顰めた。

「やなぎくん」

どうした、と聞く前に、震えた名保の声が柳を呼んだ。ぎゅう、と裾が一層引かれる。

「やなぎくん、」

もう一度、名保が柳を呼んだ。その瞳は、涙を流していないのが不思議なほど揺れている。

「私の腕、ど、どうなってる…?」

尋ねられた瞬間は意味がわからなかった。名保の右手は柳の上着の裾を掴んでいて、震えて力んでいる以外には何も異変はない。

「ひ、ひだりて…」

弱弱しい声が柳の視線を呼んでいた。直感的にそこに“何か”ある、と柳は思った。そして、見たくないとも。けれど、己の上着の裾を握りしめて縋っている少女を無下にすることなど、柳には到底できなかった。
ゆっくりと、名保の左手へ視線を滑らせる。肩、二の腕、ひじ、そして―――手首。
名保の細い手を確認するのにこれ以上ないほどに時間をかけて辿りついた先、手首に、がっちりと、病的なまでに――いや、人としてあり得ない程に白い手が、掴みかかっていた。“それ”が生きているものの手ではないこと、そして名保の右腕についたアザの正体であることは、一瞬で理解した。
固まったのは一瞬。嫌悪も恐怖も、もちろんあった。踊り場の鏡から直接生えるようにして伸びた手、しかし鏡には青ざめた顔の名保と柳しか映っていない。それでも、掴んだ“それ”は確かに存在していた。恐ろしいほどの力で名保の腕を握りしめている“それ”をなんとか引きはがそうと柳は力をこめるが、びくともしない。

「柳くん!!足ッ…!!」

ハッとして足元を見れば、別の手が柳の足を掴もうと鏡から伸びてきていた。間一髪で“それ”を避けた柳はジャージのポケットから常備している鉛筆を出し、名保の腕を掴んでいる手に向かって渾身の力で振り下ろした。痛みを感じるのか衝撃を受けたからかはわからないが、ようやく名保の手から離れた“それ”を見届けることなく、反動で傾いだ名保の身体を片腕で支えて、迫る“それら”をかわす。すでに鏡は白い手に埋め尽くされるほどになっていて、そのすべてが、名保を、柳を、まるで鏡の中へ引きずり込もうかとでもしているかのように、迫ってきていた。

「逃げるぞ」

柳は腕の中の名保に短くそれだけを告げて、名保の返事は待たずに階下へと走り出した。

 
 
 
 






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二次創作、やおい、BL、夢小説(男主・女主どちらも有)等をご存じない、または苦手な方にはブラウザバックorクローズ推奨。
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以上を踏まえての苦情等は節度を持って。感想等はひとことでも嬉しいです。
只今の取り扱いジャンルは以下の通りですが、変動したり固定したり落ち着きがないかと。
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・イナズマイレブン
・涼宮ハルヒ(小説跡地のみ)
------------------
・BASARA
・テニス
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その他突発的に。

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