気持ちがくらいからなのか、どうなのか

シリアスっぽい話しか書けないのなんなんだ
インスピ来やすいからだろうけど…納得いかねぇええええ

ということで仁幸短編
相変わらずどっちが左だかわかんない感じ

この手には微かでも確かな温もり
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ぽつん、ぽつん。
脈を打つのと同じほどの速さで管を伝っていく液体を眺め始めて、どのくらいの時間が経っただろうか。細い管を隙間なく通ったその液体は、落ちるのと同じ速度でゆっくりと目の前に横たわる身体へと染み込んでいく。透明よりも少し黄みかかったそんな液体が、どうして身体の栄養になると言うのだろう。
投げ出された白い腕は、太陽の下にあった時よりも白く、そして少し柔らかくなった気がする。傷の無い滑らかな肌に深く差し込まれている針が、余計にそう見せるのかもしれない。
針を隠すように貼られている医療用のテープをなぞるように指を這わせて、どうせなら引き抜いてやろうか、と何度思っただろう。それでもしないのは、それが目の前で昏々と眠る幸村の為にならないことをちゃんと理解しているからなんだろう。けれどそんな思考も遠い。
ラケットを握り、振りぬいて、他の誰の追随も許さない程の圧倒的なテニスを生み出す幸村の右腕。全体的に線は細くはかなげな癖に、単純な力比べでさえ勝てたことはなかった。それなのに、今のこの手は、俺の手を握り返すことすらできない。

「ゆき…」

ぽつんと呟いた声は布団に飲まれた。
繋いだ手から感じるのは僅かなぬくもりと鼓動。いつもは俺よりも余程あたたかい掌の冷たさが、あの日を嫌でも思い起こさせる。
雪のちらつく曇天の日、肌寒い空気、閑散としたホーム、学校指定のマフラーが舞って、俺の目の前で倒れた、幸村。青白い生気のない顔。閉じた瞼、不規則な呼吸、震える指先。
あの時に、俺の心臓も止まったと思った。

「ゆき」

俺が幸村の病室を一人で訪れることを、多分誰も知らない。多分、というのは、幸村本人には、もしかしたら気づかれているかもしれないからだが、わざわざ幸村が眠っている時を選んで訪れているのだからもしかしたら気づいていないかもしれない。…気づいていなければいい。
レギュラーメンバーでここを訪れるときには別段言葉を掛けることもしない俺が、気づかれていないかもしれない、なんていうひどく曖昧な時間に浸って、情けなく縋っているなんて、見られたくなどない。幸村だっていい気はしないだろうとわかっている。それでも、確かめずにはいられなくなる。
幸村のベッドに上半身をうつぶせて、目を閉じる。
とくん、とくん、と、繋いだ手から感じるぬくみと鼓動。これだけを感じていたくて、朝だろうと昼間だろうと夜だろうと、幸村が目を閉じているときだけに訪れる。

「生きとる」

生きている。幸村が。…俺が。
俺の心臓は幸村が持っているのだと、ここに来るといつも思う。体育や部活でその鼓動を感じているはずなのに、ここにいる時が一番、あつい。このあつさを、幸村にもわけてやれればいいのに。
幸村は戻ってくる。希望ではない。確定事項だ。
それでも、今こうして消えてしまいそうになっている幸村を、俺は繋ぎとめておきたいのだ。

「また、来るぜよ」

一度、顔をベッドにこすりつけるようにしてから、そうつぶやいて手を引き抜いた。つもりだった。

「…今度は、俺が起きてる時に来いよ」

ぐ、と力がこもる右手は、俺の手を、簡単には引き抜けない程の力で握っていて、俺をまっすぐに見つめる瞳は、いつもの強さで。夜闇に星がきらめくような瞳で、色の薄い唇に少しの笑みをのせて、幸村が俺を見ていた。見られていた。俺は珍しく動揺して、ガタン、と座っていた椅子が倒れるのをどこか遠い世界のように感じていた。

「いつから…気づいとったんじゃ」
「前から、誰か来てるのは知ってたんだ。けど、仁王だってわかったのは今」

言って、幸村は目を細めて笑った。なのに、すぐに困ったように眉を下げて、俺の手を引いた。それはベッドに縛られたまま横になっていた幸村よりもずっと、日の光の下にいた幸村に近い強さで。俺の手を使って身体を起こそうとしたのか、それとも俺を引き寄せたかったのかわからなかったが、ただ俺は、力のままに従って、覆いかぶさるように幸村の顔の傍になんとか腕をついて。

「…まったく、死にそうなのはどっちだよ」

そうやって近づいた俺の頭を、幸村は静かに、けど力強く撫でた。もう俺の腕を手放した右と、もう一つ左手で、ぐしゃぐしゃと。

「俺と一緒に生きてくれないと困るよ、仁王」
「ゆき…」
「こんなの、すぐに治してみせる。だから」

続けて聞こえた甘い言葉に、俺はどうしようもなくなって、ただ幸村の唇に己のそれを重ねるしかできなかった。





fin





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幸村くんの病気の話を書こうとするとどうしても仁王の方が弱くなってしまううううう
仁幸推奨なんだけど仁幸に見える？これ…
でもそうして仁王が揺れるから幸村は揺れないでいられるんだとか、そういうので…
うーん、やっぱり病気の間の話はむずかしい
ちんじゅうと似た感じになっちゃったし
もっとほのぼのとか甘いのとか無理だろうけどギャグとかそういう明るいのが書きたい