傾向
管理人の嗜好の傾向。
[CP]
・主人公は基本右。
・リバは基本的にナシ。
・公式イケメンは基本左。
・受けキャラ至上主義。
・受けキャラがいればあとはなんでもいい。
・かっこいくてもかわいい。
・かわいくてもかっこいい。
・お兄ちゃん/ギャップ萌え属性
・女の子/NLCPもすき。
-----------------------------------
・テニス(幸村くん中心)
仁幸(仁)、282、白幸、柳幸
跡幸など幸村右と、リョマ右も
・イナイレ(円堂さん右)
ブレイク、海外、バンガゼ
円春・ウル円
・FF7(クラウド右)
セフィクラ至上
・ハルヒ(キョン右)
古キョン、会キョン
キョン長
[dream]
・男主and女主
・恋愛≦仲間・友情
-----------------------------------
(ただ今の萌え)
・片倉小十郎(BSR)
伊達正宗(BSR)
松永久秀(BSR)
・幸村精市(TNS)
白石蔵ノ介(TNS)
・クロロ(H×H)
なんか趣味がばれる…
夢は読むのと書くのではジャンルに差異あり
[CP]
・主人公は基本右。
・リバは基本的にナシ。
・公式イケメンは基本左。
・受けキャラ至上主義。
・受けキャラがいればあとはなんでもいい。
・かっこいくてもかわいい。
・かわいくてもかっこいい。
・お兄ちゃん/ギャップ萌え属性
・女の子/NLCPもすき。
-----------------------------------
・テニス(幸村くん中心)
仁幸(仁)、282、白幸、柳幸
跡幸など幸村右と、リョマ右も
・イナイレ(円堂さん右)
ブレイク、海外、バンガゼ
円春・ウル円
・FF7(クラウド右)
セフィクラ至上
・ハルヒ(キョン右)
古キョン、会キョン
キョン長
[dream]
・男主and女主
・恋愛≦仲間・友情
-----------------------------------
(ただ今の萌え)
・片倉小十郎(BSR)
伊達正宗(BSR)
松永久秀(BSR)
・幸村精市(TNS)
白石蔵ノ介(TNS)
・クロロ(H×H)
なんか趣味がばれる…
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dream menu
[Dream Menu]
メモ段階のようなものなので、いずれも名前変換に未対応。
一定以上溜まったらなんとかするかと…今は未定。
←↑古 新↓→
※BASARA作品について※
1、2英雄外伝、3宴のみプレイ済
他はプレイ予定ありません。3キャラは出る場合が無きにしも非ず、ですが3のストーリーに関することは無視する可能性高いです。武将について――特に伊達家については様々捏造しておりますので、史実が好き、捏造嫌いな方は読まずにお帰り下さい。
ちなみにアニメも映画も未視聴。基本的に英雄外伝のみで稼働してます。
※テニス作品について※
資料は20.5/40.5巻のみ、知識穴だらけです。
妄想や捏造、原作との相違をスルーできない方は閲覧をお控えください。
各話タイトルオンマウスで説明有
■男主人公
・戦国BASARA
「双竜と鳳雛」
[成長編] 01/02/03/04/05/…
[幼少編] 01/02/03/04(sss)/…
[番外編・梟と鳳雛] 01/…
・Hunter×Hunter
「愛本家と蜘蛛」
01/02/03/…
・One Piece
「夕暮」
01/…
・Whithle!
「青風」
01/…
・Lucky Dog 1
「黒猫ちゃん」
01/02/…
■女主人公
・戦国BASARA
「お嫁様」
「愛姫」
01/…
「家族シリーズ」
さみしがりな君へ5のお題(幼少期)
[配布元:rewrite(ttp://lonelylion.nobody.jp/)]
夜露に濡れた仔猫(元就)
怖がらないで、甘えてごらん(佐助)
放っておけない(政宗)
躊躇いは捨てろ(小十郎)
いつでも近くにいるよ(幸村)
・The Prince of Tennis
「青い道」
01/1.5/02/03/04/4.5/05/5.5/06/
6.5/07/08/09/10/…
「立海大家族!」
設定とsss/病気の話/…
「学校の怪談」
01/…
「チェリー」
01/…
「彼と彼と彼女の話」
01/02/…
「たまごの中の愛の色(仮題)」
01/02/03/04/05/06/6.5/07/…
■短編(男女混合/オンマウスで説明)
・戦国BASARA
戦国時代10題
[配布元:沈黙夜宮(ttp://karis.obihimo.com/c/)]
血生臭い夕焼けの戦場を駆けて行く
可憐なる姫よ、戦に出でよ
我が屍の先に天下があるのならば、越えて行け
華の武将に影の忍
・The Prince of Tennis
たったひとつのその椅子に、
[選択課題・恋する台詞]
[配布元:rewrite(ttp://lonelylion.nobody.jp/)]
「そろそろ、機嫌を直してくれないか」
[オムニバス形式短編集]
もういい加減
その他メモ記事
Title/お嫁様メモ/夢設定/双竜ネタメモ/OPメモ
メモ段階のようなものなので、いずれも名前変換に未対応。
一定以上溜まったらなんとかするかと…今は未定。
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※BASARA作品について※
1、2英雄外伝、3宴のみプレイ済
他はプレイ予定ありません。3キャラは出る場合が無きにしも非ず、ですが3のストーリーに関することは無視する可能性高いです。武将について――特に伊達家については様々捏造しておりますので、史実が好き、捏造嫌いな方は読まずにお帰り下さい。
ちなみにアニメも映画も未視聴。基本的に英雄外伝のみで稼働してます。
※テニス作品について※
資料は20.5/40.5巻のみ、知識穴だらけです。
妄想や捏造、原作との相違をスルーできない方は閲覧をお控えください。
各話タイトルオンマウスで説明有
■男主人公
・戦国BASARA
「双竜と鳳雛」
[成長編] 01/02/03/04/05/…
[幼少編] 01/02/03/04(sss)/…
[番外編・梟と鳳雛] 01/…
・Hunter×Hunter
「愛本家と蜘蛛」
01/02/03/…
・One Piece
「夕暮」
01/…
・Whithle!
「青風」
01/…
・Lucky Dog 1
「黒猫ちゃん」
01/02/…
■女主人公
・戦国BASARA
「お嫁様」
「愛姫」
01/…
「家族シリーズ」
さみしがりな君へ5のお題(幼少期)
[配布元:rewrite(ttp://lonelylion.nobody.jp/)]
夜露に濡れた仔猫(元就)
怖がらないで、甘えてごらん(佐助)
放っておけない(政宗)
躊躇いは捨てろ(小十郎)
いつでも近くにいるよ(幸村)
・The Prince of Tennis
「青い道」
01/1.5/02/03/04/4.5/05/5.5/06/
6.5/07/08/09/10/…
「立海大家族!」
設定とsss/病気の話/…
「学校の怪談」
01/…
「チェリー」
01/…
「彼と彼と彼女の話」
01/02/…
「たまごの中の愛の色(仮題)」
01/02/03/04/05/06/6.5/07/…
■短編(男女混合/オンマウスで説明)
・戦国BASARA
戦国時代10題
[配布元:沈黙夜宮(ttp://karis.obihimo.com/c/)]
血生臭い夕焼けの戦場を駆けて行く
可憐なる姫よ、戦に出でよ
我が屍の先に天下があるのならば、越えて行け
華の武将に影の忍
・The Prince of Tennis
たったひとつのその椅子に、
[選択課題・恋する台詞]
[配布元:rewrite(ttp://lonelylion.nobody.jp/)]
「そろそろ、機嫌を直してくれないか」
[オムニバス形式短編集]
もういい加減
その他メモ記事
Title/お嫁様メモ/夢設定/双竜ネタメモ/OPメモ
CP story
[CP story Menu]
CP要素のあるSSはこちら。
基本的に男×男のCPしかありません。
←↑古 新↓→
※テニス作品について※
資料が20.5/40.5巻のみなので、原作と相違する点が多々あるかと思いますが、それをご了承いただける方のみご覧ください。
捏造や妄想が苦手な方には全く向いておりません。
タイトルオンマウスで簡単に説明
■The Prince of Tennis
・幸村くんと仁王(仁幸仁)
[配布元:rewrite(ttp://lonelylion.nobody.jp/)]
即物的恋愛十題
「珍獣の飼い方10の基本」
まずはかわいがってきにいってもらいましょう
とてもきちょうで、めったにてにはいりません
かわったものにきょうみをもちます
だっそうにきをつけましょう
さびしがらせてはいけません
かまいすぎるのはあまりよくありません
おこらせるとおもわぬはんげきをうけます
かいぬしのへんかにびんかんです
きほんてきにマイペースです
ていきてきにけづくろいをしてあげましょう
・幸村くんとみんな
「果てなき世界と果てなき僕ら」
支部連絡会編
01/02/03/…
[短編]
・幸村くんと仁王(仁幸二)
[title by Discolo(ttp://discolo.tuzikaze.com/)]
この手には微かでも確かな温もり
・他幸村くん受けとか
[選択課題・恋する台詞]
[配布元:rewrite(ttp://lonelylion.nobody.jp/)]
「僕がいなきゃ駄目だって、気にさせるんですよ」
■涼宮ハルヒ[凍結]
・古キョン
スレてる3年前古泉と現代キョンくん 01/02…
エイプリルフール
さくらんぼのへた
りんご飴 01/02/03…
安眠と羊?
父と子 01/02…
きょうだい
プレゼント
他お蔵入り1
CP要素のあるSSはこちら。
基本的に男×男のCPしかありません。
←↑古 新↓→
※テニス作品について※
資料が20.5/40.5巻のみなので、原作と相違する点が多々あるかと思いますが、それをご了承いただける方のみご覧ください。
捏造や妄想が苦手な方には全く向いておりません。
タイトルオンマウスで簡単に説明
■The Prince of Tennis
・幸村くんと仁王(仁幸仁)
[配布元:rewrite(ttp://lonelylion.nobody.jp/)]
即物的恋愛十題
「珍獣の飼い方10の基本」
まずはかわいがってきにいってもらいましょう
とてもきちょうで、めったにてにはいりません
かわったものにきょうみをもちます
だっそうにきをつけましょう
さびしがらせてはいけません
かまいすぎるのはあまりよくありません
おこらせるとおもわぬはんげきをうけます
かいぬしのへんかにびんかんです
きほんてきにマイペースです
ていきてきにけづくろいをしてあげましょう
・幸村くんとみんな
「果てなき世界と果てなき僕ら」
支部連絡会編
01/02/03/…
[短編]
・幸村くんと仁王(仁幸二)
[title by Discolo(ttp://discolo.tuzikaze.com/)]
この手には微かでも確かな温もり
・他幸村くん受けとか
[選択課題・恋する台詞]
[配布元:rewrite(ttp://lonelylion.nobody.jp/)]
「僕がいなきゃ駄目だって、気にさせるんですよ」
■涼宮ハルヒ[凍結]
・古キョン
スレてる3年前古泉と現代キョンくん 01/02…
エイプリルフール
さくらんぼのへた
りんご飴 01/02/03…
安眠と羊?
父と子 01/02…
きょうだい
プレゼント
他お蔵入り1
女性向けブログサイトです。(詳細はABOUTにて)
2011/11/01 (Tue)
チョコレート食べたいぜ今度買ってこよう…
姉貴との約束ばっかりが取り付けられていくってどうなのよ私…
つか、姉の友達の関係でお昼に誘われて、唸ってみたけど一応OK出した途端に「あ、おめーアウェーだわwww」て言われた俺はマジでどうしたらorz
続きはひとつ前の記事の続きですよー
*ひとつ前のお話のつづきー
*特殊能力持ちに進化ー
*伊達家をどうしていくのか考えてなかったせいで尻すぼみというか尻切れというか…
*つか、ありえない看病状態ですがそこは生ぬるく見てやってくだされ…ふつう殿さまあんなことできねえよ、的な…
*思った以上に双竜が主人公にべた甘の過保護っぷり…
身体の表面がひどく冷たくて、それなのに内側が燃えるように熱い。
ちぐはぐな感覚に脳まで焼かれるような気がして酷く恐ろしい。
大きくて激しい、抗えないなにか強いものに捉えられているような、身動きの取れない苦しさにただ喘ぐことしかできない。
なのに、その喉は空気を通すたびに引き攣れたように痛みを齎し、呼吸さえうまくできない。
(ああ、俺はこのまま死んでしまうんだろうか)
一度目は相手の過失による交通事故死、二度目は病死…いや、他殺。
毒を飲まされて死ぬだなんて、人の倍くらい人生を生きている俺でも想像していなかった。
いや、二度目の生を与えられ、この世界に馴染むようになってから身の危険だって感じることはあったけど、それは目に見えるもの(たとえば抜身の刃だとか)でしかなく、防ぎようもなく突然与えられる苦しみに対する心構えなんてしてない。
一度目は理不尽に死んでしまったから、二度目の生を与えられたんだろうと勝手に思って、なのに、二度目でもこんなに理不尽に死んでしまうのなら、俺は何のためにこの世界に生まれたんだろう。
(ああでも、それでも、この世界に生まれなければよかったなんて、冗談でも言えやしない)
白と黒に明滅する視界に、うっすらと浮かぶのは、この世界に生まれてからできた、大切な人の顔。
一度目の生をいい大人の年齢で幕を閉じた俺がこの世界に生まれ、慣れない身体、生活、そもそも世界そのものに、四苦八苦しながら過ごしていた中で、子供らしくないことを気味悪がらず、習っていないはずなのに異国語を話すことを受け入れてくれた、大切な大切な人たち。
俺がここで命をあきらめたら、泣いてくれるんだろうか?
うん、きっと、ふたりともひどく優しいから、俺なんかの為にも、その気高い心を痛めてしまうかも。
そんなの嫌だなあ。
でも、苦しいんだ。
また死ぬなんて冗談じゃないけど、でも、手に力が入らないし、空気を取り込もうにも、喉が痛くてうまくいかない。
どうやったら生きられるのか、わかんないんだ。
(兄上…政宗さま…)
いよいよ身体から力が抜けてしまう、と思った。
その瞬間に。
(…あ、った、か…い………?)
血の気が引いて冷え切っていた指先を温めるように、やさしくてあたたかい何かで、その指を包み込まれた。
右も、左も。
まるで血を通わせようとするかのように上へ下へ、擦るようにして手を温めてくれるこれは、誰かの、てのひら。
誰か、なんて言うけども、その脳裏には二人の顔しか浮かばない。
(呼び戻して、くれようと…してる…)
まるでそのてのひらから命が送られてくるかのように、冷えた身体が少しずつ少しずつ、温められていく。
ほろり、と。
目の淵に留まっていた涙が一粒、こぼれた。
それが足元ではじけて、真っ暗だった周りが、静かに光に満たされていく。
ああ、俺は生きるんだ、と。
根拠などなく、湧き出るような感情で、ただそう感じた。
ざああ―――
突然、テレビに流れる砂嵐のようなノイズが耳を打ち、俺はゆっくりと目を開けた。
この音は知っている。
何度か夢に見たことがある。
まるで託宣のように、予知夢のように、俺に何かを知らせていく。
良いこともあれば、悪いこともあった。
今度は何を俺に伝えようというのか…
途切れそうな意識の中で、ゆらりと視界に映ったのは、二匹の竜の姿。
内一匹には右目がなく、それでも堂々とした体躯と鬣、何より力強くこちらを睥睨する瞳が彼の人そのもの。
もう一匹はその一匹よりもいくらか立派な体躯で、まるで従う様に守るように傍に寄り添っている姿が、またイメージそのものだ。
二匹はまるで俺を守るかのように立派な体躯で俺を包み込んでくれていた。
(俺は、二人に守られているんだね、)
ひどく安心できるその場所で、ただ二匹にありがとう、と。
それだけを伝えようと口を開いたその瞬間。
どこにいたのか、白く細い胴をもつ小さな蛇が、俺の喉に食らいついた。
ぎちりと鋭い牙が柔らかな首の肉を引き裂いて、まさしく喉を食い破らんと顎に力を入れる。
夢とわかっていても、恐ろしい出来事に、弾けるように俺の意識は霧散した。
2
はっ、と、目が覚めると同時に辰生は上掛けを跳ね除けるようにして起き上がった。
どく、どく、と心臓が激しく脈打つのが耳に直接聞こえてくる。
はあ、と大きく息を吐けば、急に起き上がったせいでひどい眩暈がして、また敷布の上へと倒れこむ。
ぜいぜいと荒い息を繰り返しながら、夢と現実の境を虚ろな目で追い、ふいに視界に映った逞しい腕に、ぐい、と現実へと意識が引き戻された。
辰生の両の掌、そこには、己の手よりも太くてごつごつした手と、同じくらいの細さなのに筋張っていて逞しい手がそれぞれ繋がれていた。
手の先を辿れば、思い描いた通りの姿。
それだけで、辰生の胸はいっぱいになり、夢見の悪さに滲んでいた視界を、今度は幸せの涙で一層滲ませていく。
戻ってきたのだ、と。
あたたかい掌を感じながら、ただそれだけを実感した。
掌の先の二人は疲れからか辰生の褥に倒れるようにして寝込んでいて、等しく目の下にうっすらと隈を刻んでいた。
どれだけこの人たちを心配させてしまったのかを垣間見た辰生は、改めて喜びに胸も唇も震わせた。
未だ身は起こせそうにないが、二人をこのまま、こんなところで寝かせておくわけにもいかないので、辰生は声を掛けようと唇を開き、空気で喉を震わせた。
「…ぁに、っ、…?、ま…、ぁ…?」
おかしい。
ひゅう、と空気の抜けるような音が喉から響き、辰生は困惑に視線が揺らいだ。
思わず握られていた手を引き抜き、自らの喉に手を当てる。
ふいに浮かんだのは喉を食い破られそうになったあの白蛇だが、触れた限り外傷はないように思える、が。
あれが何かの啓示であるというのなら、まさか。
喉を通る風はひゅうひゅうと雑音は奏でても、辰生の思う様に言葉を紡いではくれず、むしろ意識して使おうとすれば息が喉に絡んで咳き込んでしまう。
胸と喉を押さえて、困惑の中で咳き込んでいれば、音と振動で目が覚めたのか、辰生の両脇で気配が動いた。
それでも相変わらずひゅうひゅうという息しか唇からは漏れて出ない。
「辰生…?辰生!?」
「Ah…?、!!辰生、目が覚めたのかッ!?」
看病するうちに意識を飛ばしていたらしい己に自己嫌悪する間もなく、褥の上で胸を掻き抱くようにしている辰生に気が付いた小十郎が声を上げれば、続くようにして政宗も勢いよくその身を起こした。
焦ったような、それでいて嬉しそうな顔で、しかしそれは一瞬後には心配に塗りつぶされた。
「どうした、胸が痛むのか?!辰生、辰生!?」
「おい、誰か!今すぐ侍医を呼べ!Hurry up!!」
「水だ、飲めるか?」
控えの間にいるであろう小姓、もしくは女中に向かって政宗が怒号を飛ばすと同時に、小十郎は辰生の肩を抱くようにして身を起こさせ、背中をさすりながら名前を呼ぶ。
なんとか呼吸を戻した辰生は一度、差し出された水を含んで、ようやく気付いた喉の渇きを潤すように用意された水差しを飲み干した。
その頃には呼吸も正常に戻っており、ただ全身のだるさだけが残っているだけで、思考も落ち着いた。
もしかしてあまりに喉が渇きすぎていたせいで声が出なかっただけではないのかと、今一度音を紡ごうと辰生は口を開いたが、出てくるのはかすれた呼吸と引っかかったような音が少しだけ。
心配そうに辰生を見ている二対の瞳に、ああ、やはりあれはこのことを示していのだろうとあきらめたように納得した。
今まで何度かあった託宣、それは、良くも悪くも、外れたことなどなかったのだから。
「辰生…?」
辰生の様子がおかしいことに気が付いた二人は怪訝そうに眉を顰め、それ以上に心配を滲ませた表情で声をかけてくる。
そんな二人に、言葉をかけてやれない自分が悔しくて、辰生はきゅっ、と唇を噛んだ。
そして、二人がさらに何かを言う前に、唇だけを動かして、
『ただいま』
水を打ったように静まった空間に、辰生の呼吸音だけが煩く響く。
その異常に、小十郎も政宗も、我が目と耳を疑った。
今、どうして彼の声が聞こえなかった?
どうして、唇は動いたのに、鼓膜を揺らがせることがなかった?
唇を読む術を心得ている二人だがしかし、日常にそれを用いることなど滅多になく、今のたった四文字を、見逃しそうになって、どうしてそうなったのかを理解するのに、息を止めて、苦しく感じる程度には時間を要した。
目を見開いて固まる二人に、辰生は眉を下げて静かに、微笑むしかできなかった。
*
『どなたによるものかなど、推測でしかなく、お耳汚しを致すわけにはいきませんので控えさせていただきますが、私が死ぬことも、仮に生き延びても声を失くすことも、きっと思惑のうちだったのだろうと、考えてはおります』
数日の休息を経て、身を起こしている時間も多くなってきた頃に、改めて政宗と小十郎が辰生の褥を訪れた。
目が覚めてからは早急に片倉の武家屋敷へ身柄を移動したため、政宗が訪れるには様々問題があるだろうに。
それでもそれを苦にせず訪れてくれたことは素直に嬉しく、会話をするために紙と硯を引き寄せながら、身を正して辰生は二人を迎え入れた。
二人が訪れたのには、辰生の見舞いとは他に理由がある。
それは言わずもがな、辰生に毒を含ませた者の手がかりを得るためだ。
東の離れに居た辰生の様子は政宗も小十郎もほとんど耳にすることはなく、どうしてこのような事態が引き起こされたのか、的確な判断ができない。
別世界のように存在する東の噂は、特に政宗の耳には入らないようにされている。
それを望んだのが政宗ではなくその母だというのだから政宗は唇を噛むしかない。
どうして、誰が。
一番聞きたいところを率直に聞く政宗に、辰生は先の一文を先に書きあげて示しながら、もう一度筆を執った。
『私が側付として共に過ごしている中で、私の話す話がどうやら、お気に障ったようで。良くて死を、悪くしても口が利けぬようになればよいということなのでしょう』
そうして、思惑通り辰生は声を自由に発することができなくなった。
辰生は文言の中に個人の名を残すことはなかったが、指し示すものは政宗も小十郎もすでに察していた。
竺丸を跡継ぎにと望む義姫と、政宗を支えてきた辰生の考えが沿うはずがないのだ。
竺丸に余計なことを吹き込む輩として辰生を捉え、大殿からの命故に跳ね除けるように排除することもできない者を、毒を持ち出して消そうとする。
反吐が出る。
政宗はその胸中で思いきり吐き出した。
そして、これだけではない。
「それだけじゃねぇ。俺への当てつけでもあるって訳だ」
「、?」
政宗の唸るような言葉に、意図を掴みかねた辰生が首を傾げてどういうことか尋ねた。
それに応えたのは政宗の後ろに控えた小十郎だった。
「お前が言葉を失くしたことを挙げて、義姫様は竺丸様の側付を解任させた」
「――欠けた者は必要ねえって、そういうこった」
辰生はそれに酷く衝撃を受けた。
小十郎の言葉にではない。
それに続いた政宗の言葉にだ。
義姫は、未だに政宗の右目を只管に憎んでいるのだとまざまざと思い知らされて。
戸惑う辰生が、己の所在に困惑しているのだと取った政宗は、安心させるように笑って見せた。
「心配すんな。俺はお前を手放したりなんかしねえ。喋れなくてもできることなんか山ほどあるしな」
小十郎の仕事を手伝ってくれるのでもいい。
そう言って政宗が小十郎を振り返れば、難しい表情をしながらも確りと頷いた。
こうして気を遣ってもらって守ってもらって、辰生は自分の不甲斐なさに内心で唇を噛みしめながら、にっこりと笑ってありがとう、と政宗と小十郎に告げた。
『政宗様にも兄上にも、ほんとうに感謝しております。処遇のこともですが、生死を彷徨っていた私を救ってくださったことも』
「?」
「おい、辰生?」
心当たりのない部分で感謝されてしまった二人はそろって怪訝そうに辰生を見返した。
辰生が毒に倒れ、生死の境を彷徨っている間、汗に汚れた身体を拭ったり着替えさせたり、たまに唇に水を含ませる程度しかしてやれず、あとはただ傍で座っていただけで、二人とも無力を噛みしめていたのに、当の本人からは感謝の言葉。
わからず、なにもしていないぞ、と声を掛ければ、辰生はゆるゆると首を振った。
『生死の境にいる間、私は一度、命を諦めようとしておりました』
その一文を読んで、小十郎の眉間にはぐぐ、と皺が寄り、政宗は息を止めた。
『けれど、手が、あたたかかったのです』
「…手?」
『はい。おふたりが、繋いでいてくださった。お二人に、私の命は繋ぎとめて頂いたのです』
意識の底に居て、本当に繋いでいたのが二人だったのかなど確認するすべはなかったけれど、どこか確信を持って、辰生はこの二人に違いないと信じた。
そうして、その二人だったからこそ、今、辰生の命はここにある。
『そして、二頭の竜を、見ました』
「竜?」
「…いつもの、か?」
確認するように尋ねてくる小十郎にこくりと頷く。
その表情はひどく愛しげで、優しく微笑んでいた。
『美しい蒼穹の色をした鱗に、深い宵闇色の鬣、金色の力強い瞳は左目だけでしたが、それがひどく美しくて。まだまだ強くおなりになる気焔に満ちて、あのお姿は、まさに政宗様そのものでした』
「Oh…」
『そしてその竜の側には、立派な体躯の輝く紺碧の鱗に深い香木の色の鬣の竜が控えておりました。鋭い眼光も、それでいて優しい空気も、兄上様そのもので』
「……」
『双竜様が、私を守って下さっておりましたから、安心して、』
そこで、辰生が手を止めて喉をさすった。
蘇る白蛇の口腔にぶるりと身が震える。
その様子によくない託宣もあったのだと感じ取った小十郎が眉間に皺を寄せたまま、おい、と声を掛ける。
「何か、他にも託宣を受けたんじゃないか?」
問いかけではあっても、そこに否やを答えることはできそうもなく。
蛇の苛烈な眼光に胸を灼かれるような錯覚を覚えながら、それを無理やり追い払って筆を執る。
『白蛇が。憎しみで己を焼き尽くさんばかりの瞳を持った白蛇が、喉に、喉を、食い破るために、あれは、おれからこえをうばうと、そういう』
喉を喰われる恐怖と、託宣の告げた未来に動揺が隠せず、辰生の言葉が乱れて紙を汚す。
漢字を整える余裕も、政宗の前だと一人称を取り繕う余裕も、かなぐり捨てた辰生の手を小十郎が無理やりに抑えて筆を止めさせ、逆側の腕で辰生の頭を抱え込んだ。
ぜえ、と上がった呼吸が喉を通って枯れた音を上げる。
「落着け、辰生。もう蛇などどこにもいやしねえ。こっちを見ろ」
「ぁ、っ、う…ぇ」
託宣を受けた後、辰生はたびたびこうして心を乱してしまうことがある。
それを抑えるのは決まって小十郎で、小十郎の顔をしっかりとその眼で捉えれば、辰生の呼吸も徐々に落ち着いていく。
畳の上へ転げた筆はそのままに、縋るように小十郎の着物の袖を掴む辰生の姿を見つつ、政宗は目を細めてどこかを睨み付けていた。
「HA!!蛇な。執念深さの象徴みたいなもんだからなあ、あの鬼姫にゃ似合いってやつか」
ふん、と鼻で笑い飛ばして、政宗は辰生に向き直り、不敵な笑みを浮かべて見せた。
「蛇如きが竜相手に何ができるってんだ。俺のものに手を出したからには、相応の礼をしてやるぜ!」
言って、辰生の髪をくしゃくしゃとかき混ぜた。
政宗の方が辰生よりも三つも年下だというのに、これではどっちが上だかわかったものではない。
仕草にむっとしたような表情を向けて見せる辰生に、内心で安堵の息を吐き、政宗は改めて辰生の手を取り、その暖かさを噛みしめた。
それからしばらく近況などを軽く話して、小十郎と政宗は城へ戻っていき、辰生は褥に横になった。
今はとにかく、身体を万全に戻して、どんなことででもいい、政宗と、小十郎の役に立ちたいと願うばかりだった。
----------------------------------------------
託宣云々については、幼少期とかでもっとちゃんと書くという割り振りなんです←
なぜそんなことができるかって言われると、こじゅ様の実家が神職だからということにしときたいわけで。
託宣については最初嘘設定だったんだけど、出したしできる子でいいや←←
しかし転生トリップらしさがまったく出てないぞ…
ほのぼのなシーンとか幼少期ならまだしも、大分世界に染まっちゃってる状態じゃ出しにくいっすよねえーウワア
まあこっちもゆるゆる
こじゅか政宗か…双竜サンドか…
つっかあれです、丁寧に喋らせると男の子じゃなくなる罠
あと、三人出すと三人称がムズイ
書き方考えなきゃなあ…
姉貴との約束ばっかりが取り付けられていくってどうなのよ私…
つか、姉の友達の関係でお昼に誘われて、唸ってみたけど一応OK出した途端に「あ、おめーアウェーだわwww」て言われた俺はマジでどうしたらorz
続きはひとつ前の記事の続きですよー
*ひとつ前のお話のつづきー
*特殊能力持ちに進化ー
*伊達家をどうしていくのか考えてなかったせいで尻すぼみというか尻切れというか…
*つか、ありえない看病状態ですがそこは生ぬるく見てやってくだされ…ふつう殿さまあんなことできねえよ、的な…
*思った以上に双竜が主人公にべた甘の過保護っぷり…
身体の表面がひどく冷たくて、それなのに内側が燃えるように熱い。
ちぐはぐな感覚に脳まで焼かれるような気がして酷く恐ろしい。
大きくて激しい、抗えないなにか強いものに捉えられているような、身動きの取れない苦しさにただ喘ぐことしかできない。
なのに、その喉は空気を通すたびに引き攣れたように痛みを齎し、呼吸さえうまくできない。
(ああ、俺はこのまま死んでしまうんだろうか)
一度目は相手の過失による交通事故死、二度目は病死…いや、他殺。
毒を飲まされて死ぬだなんて、人の倍くらい人生を生きている俺でも想像していなかった。
いや、二度目の生を与えられ、この世界に馴染むようになってから身の危険だって感じることはあったけど、それは目に見えるもの(たとえば抜身の刃だとか)でしかなく、防ぎようもなく突然与えられる苦しみに対する心構えなんてしてない。
一度目は理不尽に死んでしまったから、二度目の生を与えられたんだろうと勝手に思って、なのに、二度目でもこんなに理不尽に死んでしまうのなら、俺は何のためにこの世界に生まれたんだろう。
(ああでも、それでも、この世界に生まれなければよかったなんて、冗談でも言えやしない)
白と黒に明滅する視界に、うっすらと浮かぶのは、この世界に生まれてからできた、大切な人の顔。
一度目の生をいい大人の年齢で幕を閉じた俺がこの世界に生まれ、慣れない身体、生活、そもそも世界そのものに、四苦八苦しながら過ごしていた中で、子供らしくないことを気味悪がらず、習っていないはずなのに異国語を話すことを受け入れてくれた、大切な大切な人たち。
俺がここで命をあきらめたら、泣いてくれるんだろうか?
うん、きっと、ふたりともひどく優しいから、俺なんかの為にも、その気高い心を痛めてしまうかも。
そんなの嫌だなあ。
でも、苦しいんだ。
また死ぬなんて冗談じゃないけど、でも、手に力が入らないし、空気を取り込もうにも、喉が痛くてうまくいかない。
どうやったら生きられるのか、わかんないんだ。
(兄上…政宗さま…)
いよいよ身体から力が抜けてしまう、と思った。
その瞬間に。
(…あ、った、か…い………?)
血の気が引いて冷え切っていた指先を温めるように、やさしくてあたたかい何かで、その指を包み込まれた。
右も、左も。
まるで血を通わせようとするかのように上へ下へ、擦るようにして手を温めてくれるこれは、誰かの、てのひら。
誰か、なんて言うけども、その脳裏には二人の顔しか浮かばない。
(呼び戻して、くれようと…してる…)
まるでそのてのひらから命が送られてくるかのように、冷えた身体が少しずつ少しずつ、温められていく。
ほろり、と。
目の淵に留まっていた涙が一粒、こぼれた。
それが足元ではじけて、真っ暗だった周りが、静かに光に満たされていく。
ああ、俺は生きるんだ、と。
根拠などなく、湧き出るような感情で、ただそう感じた。
ざああ―――
突然、テレビに流れる砂嵐のようなノイズが耳を打ち、俺はゆっくりと目を開けた。
この音は知っている。
何度か夢に見たことがある。
まるで託宣のように、予知夢のように、俺に何かを知らせていく。
良いこともあれば、悪いこともあった。
今度は何を俺に伝えようというのか…
途切れそうな意識の中で、ゆらりと視界に映ったのは、二匹の竜の姿。
内一匹には右目がなく、それでも堂々とした体躯と鬣、何より力強くこちらを睥睨する瞳が彼の人そのもの。
もう一匹はその一匹よりもいくらか立派な体躯で、まるで従う様に守るように傍に寄り添っている姿が、またイメージそのものだ。
二匹はまるで俺を守るかのように立派な体躯で俺を包み込んでくれていた。
(俺は、二人に守られているんだね、)
ひどく安心できるその場所で、ただ二匹にありがとう、と。
それだけを伝えようと口を開いたその瞬間。
どこにいたのか、白く細い胴をもつ小さな蛇が、俺の喉に食らいついた。
ぎちりと鋭い牙が柔らかな首の肉を引き裂いて、まさしく喉を食い破らんと顎に力を入れる。
夢とわかっていても、恐ろしい出来事に、弾けるように俺の意識は霧散した。
2
はっ、と、目が覚めると同時に辰生は上掛けを跳ね除けるようにして起き上がった。
どく、どく、と心臓が激しく脈打つのが耳に直接聞こえてくる。
はあ、と大きく息を吐けば、急に起き上がったせいでひどい眩暈がして、また敷布の上へと倒れこむ。
ぜいぜいと荒い息を繰り返しながら、夢と現実の境を虚ろな目で追い、ふいに視界に映った逞しい腕に、ぐい、と現実へと意識が引き戻された。
辰生の両の掌、そこには、己の手よりも太くてごつごつした手と、同じくらいの細さなのに筋張っていて逞しい手がそれぞれ繋がれていた。
手の先を辿れば、思い描いた通りの姿。
それだけで、辰生の胸はいっぱいになり、夢見の悪さに滲んでいた視界を、今度は幸せの涙で一層滲ませていく。
戻ってきたのだ、と。
あたたかい掌を感じながら、ただそれだけを実感した。
掌の先の二人は疲れからか辰生の褥に倒れるようにして寝込んでいて、等しく目の下にうっすらと隈を刻んでいた。
どれだけこの人たちを心配させてしまったのかを垣間見た辰生は、改めて喜びに胸も唇も震わせた。
未だ身は起こせそうにないが、二人をこのまま、こんなところで寝かせておくわけにもいかないので、辰生は声を掛けようと唇を開き、空気で喉を震わせた。
「…ぁに、っ、…?、ま…、ぁ…?」
おかしい。
ひゅう、と空気の抜けるような音が喉から響き、辰生は困惑に視線が揺らいだ。
思わず握られていた手を引き抜き、自らの喉に手を当てる。
ふいに浮かんだのは喉を食い破られそうになったあの白蛇だが、触れた限り外傷はないように思える、が。
あれが何かの啓示であるというのなら、まさか。
喉を通る風はひゅうひゅうと雑音は奏でても、辰生の思う様に言葉を紡いではくれず、むしろ意識して使おうとすれば息が喉に絡んで咳き込んでしまう。
胸と喉を押さえて、困惑の中で咳き込んでいれば、音と振動で目が覚めたのか、辰生の両脇で気配が動いた。
それでも相変わらずひゅうひゅうという息しか唇からは漏れて出ない。
「辰生…?辰生!?」
「Ah…?、!!辰生、目が覚めたのかッ!?」
看病するうちに意識を飛ばしていたらしい己に自己嫌悪する間もなく、褥の上で胸を掻き抱くようにしている辰生に気が付いた小十郎が声を上げれば、続くようにして政宗も勢いよくその身を起こした。
焦ったような、それでいて嬉しそうな顔で、しかしそれは一瞬後には心配に塗りつぶされた。
「どうした、胸が痛むのか?!辰生、辰生!?」
「おい、誰か!今すぐ侍医を呼べ!Hurry up!!」
「水だ、飲めるか?」
控えの間にいるであろう小姓、もしくは女中に向かって政宗が怒号を飛ばすと同時に、小十郎は辰生の肩を抱くようにして身を起こさせ、背中をさすりながら名前を呼ぶ。
なんとか呼吸を戻した辰生は一度、差し出された水を含んで、ようやく気付いた喉の渇きを潤すように用意された水差しを飲み干した。
その頃には呼吸も正常に戻っており、ただ全身のだるさだけが残っているだけで、思考も落ち着いた。
もしかしてあまりに喉が渇きすぎていたせいで声が出なかっただけではないのかと、今一度音を紡ごうと辰生は口を開いたが、出てくるのはかすれた呼吸と引っかかったような音が少しだけ。
心配そうに辰生を見ている二対の瞳に、ああ、やはりあれはこのことを示していのだろうとあきらめたように納得した。
今まで何度かあった託宣、それは、良くも悪くも、外れたことなどなかったのだから。
「辰生…?」
辰生の様子がおかしいことに気が付いた二人は怪訝そうに眉を顰め、それ以上に心配を滲ませた表情で声をかけてくる。
そんな二人に、言葉をかけてやれない自分が悔しくて、辰生はきゅっ、と唇を噛んだ。
そして、二人がさらに何かを言う前に、唇だけを動かして、
『ただいま』
水を打ったように静まった空間に、辰生の呼吸音だけが煩く響く。
その異常に、小十郎も政宗も、我が目と耳を疑った。
今、どうして彼の声が聞こえなかった?
どうして、唇は動いたのに、鼓膜を揺らがせることがなかった?
唇を読む術を心得ている二人だがしかし、日常にそれを用いることなど滅多になく、今のたった四文字を、見逃しそうになって、どうしてそうなったのかを理解するのに、息を止めて、苦しく感じる程度には時間を要した。
目を見開いて固まる二人に、辰生は眉を下げて静かに、微笑むしかできなかった。
*
『どなたによるものかなど、推測でしかなく、お耳汚しを致すわけにはいきませんので控えさせていただきますが、私が死ぬことも、仮に生き延びても声を失くすことも、きっと思惑のうちだったのだろうと、考えてはおります』
数日の休息を経て、身を起こしている時間も多くなってきた頃に、改めて政宗と小十郎が辰生の褥を訪れた。
目が覚めてからは早急に片倉の武家屋敷へ身柄を移動したため、政宗が訪れるには様々問題があるだろうに。
それでもそれを苦にせず訪れてくれたことは素直に嬉しく、会話をするために紙と硯を引き寄せながら、身を正して辰生は二人を迎え入れた。
二人が訪れたのには、辰生の見舞いとは他に理由がある。
それは言わずもがな、辰生に毒を含ませた者の手がかりを得るためだ。
東の離れに居た辰生の様子は政宗も小十郎もほとんど耳にすることはなく、どうしてこのような事態が引き起こされたのか、的確な判断ができない。
別世界のように存在する東の噂は、特に政宗の耳には入らないようにされている。
それを望んだのが政宗ではなくその母だというのだから政宗は唇を噛むしかない。
どうして、誰が。
一番聞きたいところを率直に聞く政宗に、辰生は先の一文を先に書きあげて示しながら、もう一度筆を執った。
『私が側付として共に過ごしている中で、私の話す話がどうやら、お気に障ったようで。良くて死を、悪くしても口が利けぬようになればよいということなのでしょう』
そうして、思惑通り辰生は声を自由に発することができなくなった。
辰生は文言の中に個人の名を残すことはなかったが、指し示すものは政宗も小十郎もすでに察していた。
竺丸を跡継ぎにと望む義姫と、政宗を支えてきた辰生の考えが沿うはずがないのだ。
竺丸に余計なことを吹き込む輩として辰生を捉え、大殿からの命故に跳ね除けるように排除することもできない者を、毒を持ち出して消そうとする。
反吐が出る。
政宗はその胸中で思いきり吐き出した。
そして、これだけではない。
「それだけじゃねぇ。俺への当てつけでもあるって訳だ」
「、?」
政宗の唸るような言葉に、意図を掴みかねた辰生が首を傾げてどういうことか尋ねた。
それに応えたのは政宗の後ろに控えた小十郎だった。
「お前が言葉を失くしたことを挙げて、義姫様は竺丸様の側付を解任させた」
「――欠けた者は必要ねえって、そういうこった」
辰生はそれに酷く衝撃を受けた。
小十郎の言葉にではない。
それに続いた政宗の言葉にだ。
義姫は、未だに政宗の右目を只管に憎んでいるのだとまざまざと思い知らされて。
戸惑う辰生が、己の所在に困惑しているのだと取った政宗は、安心させるように笑って見せた。
「心配すんな。俺はお前を手放したりなんかしねえ。喋れなくてもできることなんか山ほどあるしな」
小十郎の仕事を手伝ってくれるのでもいい。
そう言って政宗が小十郎を振り返れば、難しい表情をしながらも確りと頷いた。
こうして気を遣ってもらって守ってもらって、辰生は自分の不甲斐なさに内心で唇を噛みしめながら、にっこりと笑ってありがとう、と政宗と小十郎に告げた。
『政宗様にも兄上にも、ほんとうに感謝しております。処遇のこともですが、生死を彷徨っていた私を救ってくださったことも』
「?」
「おい、辰生?」
心当たりのない部分で感謝されてしまった二人はそろって怪訝そうに辰生を見返した。
辰生が毒に倒れ、生死の境を彷徨っている間、汗に汚れた身体を拭ったり着替えさせたり、たまに唇に水を含ませる程度しかしてやれず、あとはただ傍で座っていただけで、二人とも無力を噛みしめていたのに、当の本人からは感謝の言葉。
わからず、なにもしていないぞ、と声を掛ければ、辰生はゆるゆると首を振った。
『生死の境にいる間、私は一度、命を諦めようとしておりました』
その一文を読んで、小十郎の眉間にはぐぐ、と皺が寄り、政宗は息を止めた。
『けれど、手が、あたたかかったのです』
「…手?」
『はい。おふたりが、繋いでいてくださった。お二人に、私の命は繋ぎとめて頂いたのです』
意識の底に居て、本当に繋いでいたのが二人だったのかなど確認するすべはなかったけれど、どこか確信を持って、辰生はこの二人に違いないと信じた。
そうして、その二人だったからこそ、今、辰生の命はここにある。
『そして、二頭の竜を、見ました』
「竜?」
「…いつもの、か?」
確認するように尋ねてくる小十郎にこくりと頷く。
その表情はひどく愛しげで、優しく微笑んでいた。
『美しい蒼穹の色をした鱗に、深い宵闇色の鬣、金色の力強い瞳は左目だけでしたが、それがひどく美しくて。まだまだ強くおなりになる気焔に満ちて、あのお姿は、まさに政宗様そのものでした』
「Oh…」
『そしてその竜の側には、立派な体躯の輝く紺碧の鱗に深い香木の色の鬣の竜が控えておりました。鋭い眼光も、それでいて優しい空気も、兄上様そのもので』
「……」
『双竜様が、私を守って下さっておりましたから、安心して、』
そこで、辰生が手を止めて喉をさすった。
蘇る白蛇の口腔にぶるりと身が震える。
その様子によくない託宣もあったのだと感じ取った小十郎が眉間に皺を寄せたまま、おい、と声を掛ける。
「何か、他にも託宣を受けたんじゃないか?」
問いかけではあっても、そこに否やを答えることはできそうもなく。
蛇の苛烈な眼光に胸を灼かれるような錯覚を覚えながら、それを無理やり追い払って筆を執る。
『白蛇が。憎しみで己を焼き尽くさんばかりの瞳を持った白蛇が、喉に、喉を、食い破るために、あれは、おれからこえをうばうと、そういう』
喉を喰われる恐怖と、託宣の告げた未来に動揺が隠せず、辰生の言葉が乱れて紙を汚す。
漢字を整える余裕も、政宗の前だと一人称を取り繕う余裕も、かなぐり捨てた辰生の手を小十郎が無理やりに抑えて筆を止めさせ、逆側の腕で辰生の頭を抱え込んだ。
ぜえ、と上がった呼吸が喉を通って枯れた音を上げる。
「落着け、辰生。もう蛇などどこにもいやしねえ。こっちを見ろ」
「ぁ、っ、う…ぇ」
託宣を受けた後、辰生はたびたびこうして心を乱してしまうことがある。
それを抑えるのは決まって小十郎で、小十郎の顔をしっかりとその眼で捉えれば、辰生の呼吸も徐々に落ち着いていく。
畳の上へ転げた筆はそのままに、縋るように小十郎の着物の袖を掴む辰生の姿を見つつ、政宗は目を細めてどこかを睨み付けていた。
「HA!!蛇な。執念深さの象徴みたいなもんだからなあ、あの鬼姫にゃ似合いってやつか」
ふん、と鼻で笑い飛ばして、政宗は辰生に向き直り、不敵な笑みを浮かべて見せた。
「蛇如きが竜相手に何ができるってんだ。俺のものに手を出したからには、相応の礼をしてやるぜ!」
言って、辰生の髪をくしゃくしゃとかき混ぜた。
政宗の方が辰生よりも三つも年下だというのに、これではどっちが上だかわかったものではない。
仕草にむっとしたような表情を向けて見せる辰生に、内心で安堵の息を吐き、政宗は改めて辰生の手を取り、その暖かさを噛みしめた。
それからしばらく近況などを軽く話して、小十郎と政宗は城へ戻っていき、辰生は褥に横になった。
今はとにかく、身体を万全に戻して、どんなことででもいい、政宗と、小十郎の役に立ちたいと願うばかりだった。
----------------------------------------------
託宣云々については、幼少期とかでもっとちゃんと書くという割り振りなんです←
なぜそんなことができるかって言われると、こじゅ様の実家が神職だからということにしときたいわけで。
託宣については最初嘘設定だったんだけど、出したしできる子でいいや←←
しかし転生トリップらしさがまったく出てないぞ…
ほのぼのなシーンとか幼少期ならまだしも、大分世界に染まっちゃってる状態じゃ出しにくいっすよねえーウワア
まあこっちもゆるゆる
こじゅか政宗か…双竜サンドか…
つっかあれです、丁寧に喋らせると男の子じゃなくなる罠
あと、三人出すと三人称がムズイ
書き方考えなきゃなあ…
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ジャンル雑多の二次創作小説(&絵)置き場。
BLありNLありdreamありです。
二次創作、やおい、BL、夢小説(男主・女主どちらも有)等をご存じない、または苦手な方にはブラウザバックorクローズ推奨。
「ABOUT」及び左側「傾向」欄に必ず目をお通し下さい。
ここは自己満足サイトです。
出来うる限り閲覧者様の気分を害さないよう気をつけますが、自己責任で閲覧できない方はお戻り下さい。合い言葉は「見なかったことにする」です。
以上を踏まえての苦情等は節度を持って。感想等はひとことでも嬉しいです。
只今の取り扱いジャンルは以下の通りですが、変動したり固定したり落ち着きがないかと。
------------------
・イナズマイレブン
・涼宮ハルヒ(小説跡地のみ)
------------------
・BASARA
・テニス
・OP/W!/HH
・FF7
その他突発的に。
どの作品についても、原作者・会社等とは関係ございません。
完全に個人の非公式なファンサイトです。
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・涼宮ハルヒ(小説跡地のみ)
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